ご挨拶

 皆様方、こんにちは。国立循環器病研究センター 臨床研究部の北風政史です。今回、この医師主導型治験を開始するのにあたり、一言ご挨拶させていただきます。

 私たち医療関係者の使命は3つあるのではないかと常々思っております。その一つは、患者さんに対して最善・最新の医療を提供し、患者さんを病の淵から解放してあげることです。多くの方々は、これが仕事の大きな目標になっているのではないでしょうか?2つめは、良質な基礎研究を行って、次世代の医療を創る礎を創ることです。そのためにいい論文を書いて、その成果を世界に問いかけていくことになります。3つめは、良質な臨床研究を行い、基礎研究から出てきた新しい診断薬・治療薬を臨床の場に当てはまるように正当に評価することです。

 我が国においては、医学の進歩は著しく、また、医師・看護師・薬剤師・検査技師など医療関係者のレベルは世界のどの国と比較してもはるかに高いため、この使命のうちの最初の2つは十分に完遂されているものと自負します。日本に生まれてきてよかったと思いますし、私たちは、その素晴らしいインフラストラクチャーを次世代に続けていく必要があります。しかしながら、3つめの高度な臨床研究は、残念ながら現時点で十分にできているとはいえません。

 今回、皆様方とおこなっていく「心筋保護を考慮した新しい急性心不全治療薬としてのエプレレノンの有効性を検討する臨床試験(無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験)」(英文名:the Double-Blind, Randomized, Placebo-Controlled Multicenter Trial on Efficacy of Early Initiation of Eplerenone Treatment in Patients with Acute Heart Failure (EARLIER)) は、それを克服するための試金石だと思っております。この試験は、薬事法の基づいた医師主導型治験です。この試験を計画するにあたって、GCP準拠の医師主導型臨床研究を行うことは、とてもハードルが高く大変だと多くの方からご意見をいただきました。でも私たちは、あえて本試験を行うことにしました。それは、急性心不全に苦しむ方々にエプレレノンをいち早くお届けするということ以外に、私たちが皆様方と一緒になって、ハイレベルでまっとうな臨床研究の在り方を学ぶということになるからです。
 私たちは、石にかじりついてでも本試験を完遂したいと思います。そして、この循環器領域では珍しい医師主導型治験から多くを吸収して次世代の臨床研究につなげていきたく存じます。ぜひ、ご一緒しましょう。